fc2ブログ

南総里見八犬伝の私訳

相模小僧が南総里見八犬伝をいまの言葉で書いてみます

Entries

第四回 48

と、丁寧に説明すると、皆は手を打って喜び、
「ここまでもやつれなさっていたので、面影を知っている人でもまさか金碗殿とは思いもせず、失礼なことを言ってしまいました。無礼を許してください。私らは智もなく、才もなく、虫に等しい存在でありますが、国主の旧恩を忘れることはありません。皆定包を恨めしく思わない者はなし。憎しと思っても力及ばず、勢いもつけることできずに月日を今まで過ごしてしまい、嘆いてました。そして里見の君の事は、誰とはなく巷での風聞によって知っておりました。素性を問えば源氏の嫡流、また類まれなる良将であるとも。聞いた時から慕っており、活躍を渇望しておりました。夏の日よりも過酷に似非大将に搾り取られており、民草のためにここで軍を起こしていただければ、誠に国の幸いであります。誰が命を惜しんでいられようか。これが我らの思いであります。金碗どのお取り計らいをお願い申し上げます。」
と返すと、孝吉は後方を見返り、
「そこで聞きなさっておいでであり、今の願いは届いておる。」
と案内すると、義実は氏元・貞行を従えてやぶ影から静かに進み出て、衆人に向かい、
「私が里見義実です。乱れた世はますます進み、弓矢でもって身を護る流れで、修羅闘場に奔走し、傷の負った鳥のようになっても、この汚れた世の影では休むことも叶わない。そして民の父母となるべきその徳も絶えてなしといえども、人がもし私を必要としてくれるのなら、私もまたその議に加わろうと思う。例えば千里を走る駿馬も、その足なければ走ることできず、万里を渡る大鳥も、翼なければ飛ぶことすらできない。私は孤独となった落ち武者であるが、今衆人の佐を得た。遂に動くことができる。しかし滝田は剛敵である。馬や武具整わず、兵糧の蓄えなければ、軽々しく進行はできない。このことについては如何しようか。」
スポンサーサイト



Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

右サイドメニュー

ブログ内検索

ブロともになってください

おすすめ